アルミ缶集めから見えてくるもの
路上生活をしている人が全くの無収入だと思っている人もいるかもしれませんが、全国の路上生活者の平均月収は4万円程度(概数調査)なのです。どんな仕事をしているかというと、自治体が行う特別就労(街の清掃作業などで輪番制の仕事。月に2~3回程度は順番がまわってくる。1回7,000円程度)や特殊な日雇い労働(ゴミ処理場の煙突掃除など)、そして廃品回収がある。インターネットが一般的になる前は野球やコンサートなどのチケット代理購入(チケット売場に並んで買う)なども収入源にしている人がいたが最近はほとんどなくなったようです。
そんな中で、最も多くの人が行っているのが「廃品回収」です。昔からよく集められていたのは段ボール。中小工場と折衝して廃段ボールを貰うなどしてリヤカーに乗せて集めている人を街角で見たことがある人も多いと思います。現在の価格は10~12円/kg前後。リヤカーに山積みにして100~150kgが限度でしょうか。換金すると1,000~2,000円程度。最近は、廃段ボールを卸してくれる町工場も減っていて、何しろ段ボールはかさばるのと、リヤカーもしくは台車がなくてはできない商売なので、段ボール中心の廃品回収をする人も減っているようです。現在、多くの人が集めているのはアルミ缶で、現在のレートは120~130円/kg前後。1缶あたりにすると1.7~1.8円程度でしょうか。1,000缶集めて1,700~1,800円といった感じです。1日8~10時間歩き回って集めて、「平均1,000円程度の稼ぎになるかなぁ」とよく言っています。時給にすると100~120円。ある意味、低賃金重労働をしているとも言えますかね。
以前、廃品回収をしている路上生活の人たちのことをもっと知りたくて、アルミ缶集めをしてみたことがありました。もちろん、山谷地区周辺で集めては、本業にしている方々の「飯のタネ」を奪ってしまうことになるので違うかたちで集めました。私の自宅がある地域でジュース自販機横のゴミ箱をまわって集めたり、ゴミ集積所に出された空き缶を拾ったりしました(※ゴミ集積所に出されたゴミは、民法上拾ってきてはいけないものです。私もそれが分かってからはやめました。皆さんもしないでくださいって、しないですよね(-_-;))。また、友人にジュースやビールの空き缶を捨てずに持ってきてもらったりしました。半月かかって集まった量は、およそ20kg程度。ゴミ袋(70L)に潰した缶で4袋でした。山谷地区では集めたアルミ缶などを買取りに業者がトラックで定期的にやってきます。もちろん業者に持ち込むこともできます。集めたアルミ缶を売ると3,000円程度になりました。その頃は北京オリンピックの前で、あらゆる資源のレートが上がっていましたので、約150円/kgと高値でした。それでもこれだけ集めて3,000円かと思ったものです。色々な見方があると思いますが、路上生活をしている人が怠け者だと一括りに見てはいけないことを感じてもらえる話ではないでしょうか。
アルミ缶集めをしていて、もう一つ分かったことがあります。それは、ゴミは人や家庭、地域、社会を表すということ。集積場から持ってきたアルミ缶の袋は千差万別でした。一缶一缶水で濯いできれいに潰して捨てている袋、缶の中にたばこの吸い殻が入っていたり、飲み残しが入っていたりする袋、そもそも分別なんて全くしていない袋…。自分はゴミを出すときに注意をしなくてはと心底思いました。そして、出されるごみの多いことに愕然としました。飲み残し、食べ残し、まだ使える電化製品、日用品などなど、何だかんだと言ってこの国は豊かなのではないかと思ってしまうほどでした。そして、かたやそれらを拾い集めて生計の足しにするスカベンジャー(ゴミから使えるものを拾って売る職業の人の意:海外のスラム地区で使われている言葉)がこの国にもいるという矛盾な現実。
ゴミ一つでも色々な事が分かるものですね。