友愛会の支援者への手紙 47

 

伝えることの難しさ、伝えるためのヒント

伝わらない人に、どうしたら上手く伝えられるのか。
対人援助職の人たちから、そんな悩みをよく聞く。
そこで、ちょっと小話を…。
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訪問看護に伺っている、俗に言う「ゴミ屋敷」に住む女性。
地区担当の保健師さんは何度も掃除を試みてきた。
「寝るスペースを作らないと体に悪いから」、「どこに必要なものがあるかわからなくなってしまうでしょ」…と。
そうすると本人は渋々了解して、保健師さんは掃除をする。
保健師さんも本人が後で“怒らないように”一つ一つ確認しながらゴミ袋に入れていく。
しかし案の定、翌日から電話がなる。
「あの保健師に捨てられた」、「誰かが盗んでいった」…と。
一方、訪問看護では「掃除をしよう」とすすめることをしない。
訪問時に本人と雑談しながら、ティッシュ屑や食べ終えたコンビニ弁当の容器だけは、了解も取らずにいつもゴミ袋にまとめて捨てていた。
そんな中で、
女性「そこのふすまを開けたいの」
看護師「どうして?」
女性「中に何が入っているかしばらく確認していないから」
看護師「じゃあ開けようか」
女性「ふすま開けられる?」
看護師「ふすまの前に色々置いてあるからすぐには開けられないかな」
女性「そうなの、中からネズミとか虫がでてきたら困るからいっぱいおいてあるのよ」
看護師「じゃあ置いてあるものどけてしまったら困るね」
女性「いいのよ。それと、それと、あとこれも捨ててもいいの。だって看護師さんがネズミ退治もしてくれるでしょ?」
看護師「じゃあネズミ退治をしよう」
女性「そしたらこの山もいらなくなるから掃除もできるしね」
看護師「掃除したかったの?」
女性「そりゃそうよ」
看護師「そうだよね」
女性「看護師さんもしたいでしょ?いつも見てて掃除好きだと思ってた
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伝えることはとても難しい。
もしかしたら「伝える」は、“発信”ではなく“受信”なのかもしれない。
自分が伝えたいことを伝える方法を探るのではなく、伝える・伝えてくれる機会を作ること。
しかしながら、これがまた難しいものですが。

2019年07月19日