友愛会の支援者への手紙 51

 

私たちが活動する理由

ある日のことである。
息子からDVを受けている高齢女性の支援についてのコンサル的な相談が他県の知人からあった。
詳しく状況を聴いて幾つかの方法をアドバイスした。
そして最後に、「それでも上手くいかなかったら友愛会に連れてきて」と付け加えた。
数日後、無事に安心できる環境を確保できたと連絡がきた。
ほっと安心したと同時に、以前あったとある老女の出来事を思い出した。
10年くらい前の冬ことである。
A福祉事務所の高齢福祉課から週末の夕方に電話が掛かってきた。
80代後半の女性を保護して欲しいという依頼だった。
詳しく話を聴くと、息子夫婦と同居しているのだが嫁との関係が悪いのだという。
その「関係が悪い」が常識の域を超えていた。
自宅のガレージ(車庫)の中、シャッターに一番近いところに、汚くなった布団を置いて、そこで80代後半の老女は生活させられているというのである。
しかも、そのような生活を半年以上もの間…。
私たちはすぐに福祉事務所に向かい、その老女と会って可能ならすぐにでも友愛会の施設に入所させると伝えると、福祉事務所の担当者は来週で良いというのである。
来週まで、どこか彼女が泊まれる別の場所を用意できたのかと尋ねると、彼女はガレージにいるというのである。
まだ若かった小生は、「なぜそんなひどい環境に帰したのか?福祉事務所は何を考えている」と受話器に向って声を荒立てた。
担当者の説明では、恐妻に頭の上がらない息子がそっと福祉事務所に電話をしてきて状況が分かり、嫁がいない隙にその家に訪問してきての電話であると言う。
翌週、嫁が朝からいない日に福祉事務所に来るように老女に伝えているから、その日に友愛会で保護をして欲しいとのことであった。
それでも私は納得がいかなかった。
冬である。朝晩0℃を下回る時期であった。
外とかわらない状況に80代後半の老女がおかれている。
もしかしたらサイコパスの様な偏った言動とも考えられる嫁の状況を鑑みると問題の根は深い。
自分の母へそのような所業をする妻に何も言えない息子と、ある意味、事の重大さを理解していない福祉事務所にも苛立ちを感じていた。
結局、福祉事務所を急かして、その日のうちに某シェルターに避難できるようにした。その老女の家が友愛会からとても遠いこともあり、また既に夜中になっていたので、近隣のシェルターへの保護を考えたのであった。
友愛会のスタッフといつも話になる。
われわれの活動は、決して十分と言えるケアや相談、支援にまではまだまだ至っていないが、この80代後半で寒さに震え、肉親の冷たい心に震えている老女のように、友愛会を必要とする人がいる限り、よりしっかりとした活動にしていくのはもちろんのことだが、何よりもこの活動を続けていくことが大切なのだと。
そう、こういった出来事が世の中のあちこちで起きていることが、私たちが活動を続ける理由の一つである。

2020年04月14日