友愛会の支援者への手紙 33

 

アクティング・アウト

精神的な障がい性、とりわけパーソナリティの障がいと思われるような「生きづらさ」を持つ人とのかかわりの中で、往々にして出くわす出来事にアクティング・アウト(行動化)というものがある。
これは、互いの関係性がある程度出来てきたところで、その関係を壊してしまうような言動・行為を、無意識的・衝動的に引き起こしてしまうことをさす言葉である。
具体的に言うのなら、突然攻撃的になったり、拒否的になったり、あるいは自傷行為や自殺企図をしたり…というようなことをするのである。
専門家の中では、どこかで無理がかかっていたり、抑圧してきていたりしたものが基となった無意識的な抵抗ではないのかと考えられている。
このアクティング・アウトに出くわしたときに、その人とかかわってきた人は動揺し、怖くなり、嫌になり、あるいは嫌われたと思うのは当然とも言えるのだが、結果「この人は良くならない」「私には上手くかかわれない」と判断してしまうことが多いのである。
しかしながら、アクティング・アウトはパーソナリティの障がいなどがある人の人間関係の構築過程の中で起こりうる「振り戻し」のようなものなのである。
そういった病理性があるということを考え、再度、その人との関係を振り返り、無理がかかっていたことはなかったのか、ストレスが増加していなかったのかを考え直せるならば、「関係性の破綻」以外の結果が生じるのであろう。
先日も、ある人に対して連携してかかわっていた他機関の援助者が、アクティング・アウトであろう出来事を経験したことで、その人に見切りをつけてしまう出来事があった。
他人の思考や感情を想像することはとても難しい。
それが、自分の思考や感情との接点が少ないと思える人が相手であれば尚更であろう。
たとえ思考や感情が想像できたとしても、それでも関係性を継続していくことへの抵抗感を感じる場合もあるであろうし、職業的立場から考えて関係性を継続できないこともあるかもしれない。
それでも想像することは大切である。
想像することが知ることにつながり、知ることが不安や怖さを緩衝させ、それが相手にも伝わったとき、「生きづらさ」の一端を崩していけるかかわりとなりえるのだと思う。
自分自身にもいつも言い聞かせ自戒していることの一つである。

2018年06月01日