マスクをしている
そのため気になるか否かくらいの息苦しさを感じている
咳が気になる
自分の咳も他人の咳にも不安と恐怖がある
緊張感に覆われている
他人に近づかぬようにとどこか張りつめた気持ちでいる
長い時間を一人でいる
話すことが減っていると気づき鬱々と空虚さを感じている
息と心はつながっている
深呼吸をしよう
安心できるところでいい
家の中でも周りに人がいないところでもいい
手を広げ
胸いっぱいに息を吸い込み
声を出しながら吐き出そう
そして心が少しだけゆるんだら
こんな今でも感じられる小さな幸せを見つけて
平穏や救いを願う祈りとともに
感謝の祈りをしよう
そう私は思う
小さな祈りのページ
「祈り」と「詩」
息と心の祈り
詩 呪文ではなく
不憫な言葉たちがいる
自由、平等、正義
この言葉たちは異用されていると思えてならない
自由を盾にして他者を傷つける
平等を唱えて利己のみを考える
正義を振りかざして在りもしないはずの敵を作り攻撃する
誰とは言わないが
武器のようにこの言葉たちを操って
病のようにこの言葉たちに操られて
ゴツゴツとした塊をせっせと生産している人間はいやしないか
この言葉たちが生まれたとき
こんな使い方をするために生まれた訳ではなかったはずなのに
この言葉たちは
呪文ではなく祈りの言葉として生まれたはずなのに
しあわせのための祈り
作ろうと試みた
しかしながら作れるものではなかった
探そうと動き回った
しかしながら見つかるものではなかった
そもそもそれははじめから傍にあった
気づけていなかっただけであった
しあわせとは
作るものではなく
探すものではなく
祈りとともに
気づくものだった
誠実を求める祈り
誠実さが嘘をつかないことだというならば
少なくとも相手を陥れたり自分の保身のために
わたしは嘘をつかないでいたい
誠実さが私利私欲で物事を考えないことだというならば
少なくとも偽善と見栄の皮をかぶらせず
わたしは相手の気持ちを想像したい
誠実さが怠惰にならないことだというならば
少なくとも誰かや何かの所為にせず
わたしは一所懸命を増やしたい
不直の祈り
正直になるのはなんと難しいことか
思考に正直なれば
感情に不直となる
感情に正直なれば
思考に不直となる
何に正直であればよいのであろう
自分に正直に
かの人に正直に
皆に正直に
不思議なもので
何かに正直なれば
それ以外に不直となることの何と多いことか
ならば不直であってもよいのであろう
翻るならば
何かに不直ならば何かに正直とも言えようし
窓辺の祈り
目に映るあざやかな新緑の木々
その匂いを吸い込むことはない
ゴトゴトと吹きあたる木枯らし
目を細めて塵をさける必要はない
一面を灰青色に染める長い雨
手先がかじかみ冷えることはない
私はいつも窓辺に立っている
透明な薄い一枚の隔たりのあちらを
目と耳でしか感じぬ窓辺に立っている
陽の光が射し込む
温かな空気が窓辺の私を包む
窓辺にいながら目と耳以外で感じとれる
そのいざないは私に窓の鍵を開けさせる
笑顔の祈り
不安で笑顔を忘れているなら
不安がなくならなくても
安心っていう気持ちも持てることに気づこう
それは好きな人と話をして笑顔になって分かること
恐怖で笑顔を忘れているなら
恐怖がつきまとっていても
怯える気持ちからは離れられることに気づこう
それは他人を勇気づけその人が笑顔になって分かること
不安も恐怖も自分で大きくしてしまうもの
だから自分から小さくすることができる
笑顔を作ることがその方法
そんなことを祈っている
この祈りが届きますように
詩 私と世界
わたしの眼からしか見ていない
わたしの耳からしか聞いていない
わたしの肌からしか感じていない
それをわたしの頭でしか受けていない
わたしと世界とのつながりは
つねにそのようにある
つねにそのようにしかない
主観から逃れられないわたしは
主観を避けて客観を求めるのではなく
主観の広がりを求めて生きよう
わたしは私なのだから
静かな祈り
言葉をつくす
伝わると信じて
多くの言葉をもちいて
何度も何度も
そうして
言葉のむなしさに出会う
言葉に頼る危うさを知る
言葉が凶器になると理解する
言葉を捨てる
届くと信じて
一つも言葉をもちいず
遠くから遠くから
そうして
自分の弱さに出会う
自分に醜さがあると知る
自分が愚かなのだと理解する
言葉が残る
幾つかの大切な言葉だけ
「ありがとう」
「ごめんなさい」
そうして
ただ静かに穏やかに祈りたいと思う
ありがとうの祈り
どんなことも
恨めしく思えば恨めしくなり
憎らしく思えば憎らしくなり
いくらでも
自分以外のせいにできる
だから
ありがとうと口ずさもう
ありがとうを探してみよう
なぜなら
ありがとうは絶対に見つかるから
それは自分にも穏やかさをもたらすから
ありがとうは祈りだから
安心のための祈り
不安は不思議といつも横にいる
困ったものでいなくならない
横にいて
大人しいときもあれば
私をいじめるときもある
お前なんかいなくなれ!
けれどもいなくなったことがない
これじゃ安心は
いつまでたってもえられない
そう思いきや
不安が大人しいときは
安心だと思っているときもある
そうして気づく
不安もいなくなってしまっては
いなくなったことに不安になるのかも
そうして気づく
不安が横にいたとしても
安心を持てるものなのかもしれない
私に安心を与えてください
私は不安を取り除いてとは望みません
ただ安心を持てるようにしてください
春、ヤマの祈り
早春早朝
都会のヤマで
ドロボウ市でたむろする
今は使わぬ道具を見ては
東京タワーを建てし自分を
誇る口上なめらかに
見上げた空にはスカイツリー
時は過ぎしと歩き出す
右手の杖がカツカツ鳴る
ヤマの歌人は一歌詠む
白月を 刺したる串は
変わりしも
あの日とおなじ 市は止むまじ
晩春夕暮れ
都会のヤマで
ドロボウ市と同じ路地
顔ぶれ同じし行列は
炊き出し求めて集いしも
囁く鼻歌悲し気に
見上げた空から泪雨
腹を鳴かせて歩き出す
左手の杖がコツコツ鳴る
ヤマの俳人は一句詠む
落ち桜 踏みし足々 杖まじり
歌に祈り、句に祈り
祈りと共にヤマを生きる
無題の詩
いつもそばにいてくれる
いつも想っていてくれる
いつも見ていてくれる
いつも聞いてくれる
いつも微笑んでくれる
そんな人がいると言うのなら
それはあなたを大切に思ってくれている人
だから
あなたも大切に思う人にそうしよう
そんな人がいないと言うのなら
それは神さまがしてくれているから大丈夫
だから
あなたも大切に思う人にそうしよう
トンネルの祈り
私たちは人生において
度々トンネルに潜り込んでしまう
光が見えなくて
長い長いトンネルに
でも
出口のないトンネルはない
そして
トンネルは長くなんてならない
私たちの歩みがはやければ
トンネルは短く感じ
光は見えすぐに大きくなる
私たちが歩みを停めれば
出口へはいつまでも辿りつけず
終わりのない暗闇となる
トンネルの所為ではないのだ
わたしの歩みの所為なのだ
歩み続ける強さをお与えください
時の祈り
時とは
待つには遅く
過ぎ去りしははやい
時とは
辛苦には長く
喜楽には短い
同じく刻みすすむのに
感情によって違い
年齢によって違い
人が違えばそれによっても違う
そんな“時”という波を
私は唄うように祈りながら
ただひたすらに漕いでいく