友愛会の支援者への手紙 35

 

タブー

毎日のようにニュースの話題や新聞紙面に「貧困」という言葉が出てくる。
特にここ2~3年は、「女性の貧困」「こどもの貧困」という言葉が目耳に飛び込んでくる。
「女性の貧困」について気になることは、性産業との接点がほとんどニュースや記事にみられないことである。
もちろん、パブリックな情報提供の場では“タブー”という雰囲気があるのかもしれないが、「女性の貧困」について考えていくのであれば、避けようがないほど関係性があることであろう。
20年以上前になるが、路上生活者支援や生活困窮者支援ということに足を踏み入れたばかりの頃、一人の若い女性の支援相談を受けたのを覚えている。
20代前半のAさんには軽度の知的・発達障がいがあった。
幼い頃に父親は他界し、母は障がいを持ったAさんを育てられず養護施設にあずけた。
18歳になり就労先を見つけ、施設を出て一人暮らしを始めた。
しかし仕事は3ヵ月で辞めてしまった。
職場の同僚によるいじめ、障がい性の不理解は、彼女の耐えられる限界を一瞬にして超えてしまったという。
それから彼女は生きていくために風俗業で働くこととなる。
しかし、客や店に金をだましとられたり、サービス以上の性的折檻を受けたりすることばかりで、風俗業での仕事も出来なくなっていった。
そして私たちが出会った頃にはホームレス生活になっていた。
私たちのところに彼女についての相談を持ちかけてきたのは、女性の高校教師の方だった。
その方は、勤め先の高校の校庭周辺をいつもフラフラしている彼女のことが気になり、ある日仕事を終えて帰る時に声をかけたという。
3~4日食事を摂っていないとのことで、お弁当を買って食べさせながら話を聞いていると、彼女が校庭の周りをウロチョロしている理由が分かったという。
風俗店でも客に相手にされなかった経験などもあり、日銭を稼ぐために高校生相手に1000~2000円で売春を持ちかけていたと彼女は言ったという。
話を聞いて教師は絶句したという。
その後、私たちの方で生活保護の申請を手伝い、彼女はホームレス生活から脱却した。
それから20数年、この仕事の中で女性の生活困窮者の方々とのかかわりは、500名以上になるであろうが、彼女たちの中で性産業とのかかわりがあった方は少なくない。
60代以上の女性でつい最近までそれを少ない収入源にしていたという方やもいた。
何が良い、何が悪いと簡単に結論付けた話はできないが、この“タブー”については蓋を閉じていてはいけない気がする。

2018年07月01日