団体概要

NPO友愛会の沿革

戦後(第二次大戦後)、焼け野原になった東京に、GHQ(連合国軍総司令部:マッカーサー元帥)が戦災民のためのテント村をこの地に作った。そのテント村は、そのままバラック街となり、復興期には、東北・北海道からの季節労働者や出稼ぎ労働者が仕事を求めてこの地に多く集まった。そして、高度経済成長期に入り、東京の建築ラッシュが押し寄せると、日雇労働者が大いに必要になってきた。山谷地区は、簡易旅館(通称ドヤ:長期滞在ができる簡素な素泊まりの旅館)が建ち並び、日雇労働者の市場として成長していった。南千住の駅からここに来るまで沢山の旅館があったのがわかったと思うが、それらがドヤである。もっとも最近はずいぶんきれいになり、ほとんどが個室の旅館である、3,000円台のビジネスホテルも増えたが、日雇労働者が博したころは、二段ベッドが一部屋に4つも入り、ベッドの上だけが自分のスペースというドヤも多くあった(金額は一泊800~1,000円、通り沿いにあるパレスホテルは現存するベッド式ドヤのひとつ)。山谷地区で生活している日雇労働者にとっては、仕事をすればドヤに泊まり、していなければ路上で野宿(業界用語では「青カン」:青空簡易宿泊の略)するというのがさほど珍しくはなかった。もちろん人によってではあるが、地域柄、路上生活は風景の一部であった。90年代前半、バブル経済の崩壊を期に、山谷地区は衰退の一途をたどる。土木建築業は一気に低迷し、仕事を失う日雇労働者が多くなった。それに合わせたかのように、日雇労働者自身も歳をとった者が増え、体を悪くするものが増えていた。
それまで、山谷地区でボランティア活動をしていた団体は、炊き出しや無料の診療所などで路上生活者やドヤの生活者を支援してきたが、収入がなくドヤで生活出来なくなって路上に行き、高齢で体も弱くなって路上生活に耐えられなくなるなんて人がとても増えてきて、食事や医療だけでは解決策がみい出せなくなってきていた。路上で倒れ、救急車で病院に運ばれて、治療が終わっても路上に帰すわけには行かないし、そのようになる恐れがある人も多くなっていた。そこで山谷地区で古くから活動している「山友会」のスタッフやボランティアで新たに「友愛会」を立ち上げ、友愛ホームをつくり、「住む場所」の支援を考えていったのが友愛会のはじまりである。もちろん、資金がなくては運営ができないので、色々考えてみると、生活が営めない人たちを守る生活保護という制度の中で支援できることがわかった。本人たちが受給された保護費のうち、宿泊費と食費など本人の生活に負担が掛からない程度で払ってもらい、その上で住家のみならず、日常の介護や相談などをしていくようにした。
しかし、このような経過で歩み始めた友愛会であったが、活動していく中で、福祉事務所(各区にあり、生活保護を含む福祉政策の実施機関)の方から、行き場所がなく、どうしてよいかわからない状態の人を依頼してくることが増えた。入居する人たちは、山谷地区の路上生活者だった人だけでなく、いろいろな背景を持った人が増えていく。もちろん、男性だけではなく、女性の依頼も増え、友愛ホーム以外にやすらぎの家、STEP-UP HOUSEなどを作っていくこととなる。結果、精神障害や知的障害を持ちながらも、それぞれの施策では支援を受けられない状態の人や、刑務所を出た後、身寄りもなく生活が営めない人などさまざまな問題を抱えた人たちが入所してくるようになった。現在は、ある意味「なんでも屋」「駆け込み寺」といった感じである。
また、住家の支援がままなったが、前記のように色々と複雑な問題を抱える入所者が増えてきた。しかも、ドヤで生活している人たちも、前記の通り高齢で病気を持った人ばかりである。より生活上の援助が必要になってきたが、友愛会では、そこまでのマンパワーが確保できない現状であった。そこで、訪問看護と訪問介護を始めることにした。ドヤで生活していながら、本当は一人暮らしでは病気や障害などでどう考えても不安なことが多い人、友愛会の施設にいても少ないスタッフでは援助しきれない人などを看ていけるようになった。特に、精神障害や薬物・アルコール依存症などの人たちにも、専門的援助が出来るスタッフを揃えることが出来ている。
どんな制度や支援システムがあってもその枠組みからもれてしまう「隙間」は存在するもので、友愛会はそんな隙間を埋めていく活動をしています。

2000年4月  任意団体「友愛会」として友愛ホーム(男性用)、やすらぎの家(女性用)を開設

2001年6月  特定非営利活動(NPO)法人 取得 「特定非営利活動法人友愛会」となる

2001年10月  STEP-UP HOUSE(男女混合)を開設

2003年7月  訪問看護ステーションゆうあい、ヘルパーステーションゆうあいを開設

2009年4月  居宅介護支援事業開始 ヘルパーステーションゆうあいと併せて「ゆうあい」開設

 

 

NPO友愛会の概要

友愛ホームの玄関

STEP-UP HOUSEの一室

 

<宿泊提供事業>
友愛ホーム
 男性用の宿泊施設で、路上生活をしていた人や住む場所を失った人、病院や特別養護老人ホームへの所 を待っている人たちなど生活するところです。入所の理由は様々ですが、病気や障がいを抱えた人がほと んどです。定員は15名、食堂で食事の提供もしていますし、介護やターミナルケアにも対応できます。 一階は介護用ユニットになっており、二階の部屋は個室です。


●やすらぎの家
 女性用の宿泊施設で、路上生活をしていた人や住む場所を失った人、病院や特別養護老人ホームへの入院 を待っている人たちが生活するところです。家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス)に苦しんで家を 飛び出した人、精神障がいや知的・発達障がいの方も多く入所します。定員は15名、自炊できる施設で、ある程度生活能力の高い人が共同生活をしています。部屋はすべて個室です。


● STEP-UP HOUSE
 男性、女性両方の方を対象とした宿泊施設で、一階は介護対応になっており、友愛ホーム同様ターミナル ケアにも対応しています。全室個室で、二階は女 性用フロアになっています。食堂で食事の提供もし  ていますし、自炊も可能ですが、自分で食事を作りな がら生活をしている方もいます。


● その他の生活の場
 3つの施設の他に、山谷地区にあるドヤ(簡易旅館)の部屋の紹介おしております。ドヤで生活しながら 食事や通院、日常の介護、その他生活上必要なお手伝いを友愛会スタッフがお手伝いできるようになって います。

調理スタッフがいつも温かい食事をつくっている

<簡易宿泊所(ドヤ)生活支援事業>
山谷地区のドヤ(簡易旅館)で生活されている方に対しても、生活支援をしております。         ①簡易宿泊所(ドヤ)確保のお手伝い
 生活保護を受けている男性、年金で生活している男性などで、簡易宿泊所(ドヤ)での生活を考えている 方々に、簡易宿泊所(ドヤ)の紹介をしています。
②金銭管理などのお手伝い
 自分でお金の管理をしていると、どうしても使いすぎてしまう、あるいは貯蓄しようにも預けておく場所 がないとお思いの方のために、金銭管理の手伝いをしています。
③食事の配食サービス・生活支援
 友愛会の近隣に住んでいる方やドヤに住んでいる方で、食事の準備が難しい人には配食もしています。ま た、色々な生活支援(例えば、病院の同伴や訪問介護などでは出来ない支援)もしています。


<訪問看護・介護事業>
●訪問看護サービス
 東京都台東区・荒川区にまたがる旧「山谷地区」には、数多くの簡易宿泊所(ドヤ)があります。簡易宿泊 所には、日雇労働者の方、生活保護を受けている方などが住んでいます。昨今は特に、高齢の方や慢性疾 患を抱えた方が多く、最近の統計では、簡易宿泊所に生活する方の平均年齢は60歳を超えているとのこ とです。高齢で病気がちな方が、簡易宿泊所の狭い部屋で一人寂しく人生を閉じていく・・・そんなこと が少なくないのです。 訪問看護ステーシヨン ゆうあいは、介護保険や病院からの医療保険内で、地域の 人たちのご家庭への訪問だけではなく、簡易宿泊所(ドヤ)に生活する方々で、訪問看護を必要とする方 々に訪問する活動です。もちろん、生活保護を受けている方でも介護保険によって要支援、要介護の認定 のある方なら必要に応じて訪問看護が受けることができます。特に、精神障害を患う方への精神訪問看護 は、まだまだ行っている事業所が少ないのですが、ゆうあいでは精神看護の経験が豊富なスタッフが多く 在籍し、山谷地域でなく東京東部地域全般でお困りの方にサービスを提供しています。


●訪問介護サービス
  訪問看護サービスと同じく、ヘルパーステーション ゆうあいという訪問介護サービスもやっています。 洗濯や掃除、買物など日常生活が一人ではままならない方や、一人孤独に生活している方などを訪問し、 お手伝いするサービスです。訪問看護同様、介護保険によって要支援・要介護の認定を受けている方なら 誰でも伺えます。訪問事業で見ていた方が、病気を悪化させてしまうようなことがあれば、宿泊提供施設 に移動も可能です。身寄りがない、住む場所が定まらないと言った方々が私たちの小さな活動で少しでも 安らかな生活ができたならと思います。