友愛会の支援者への手紙 50

 

一筋の糸

電話が鳴る、精神訪問看護で伺っている男性が投身自殺を図ったと精神科クリニックから。
救急車で運ばれ命に別状はないとのことであった。
電話で彼からの伝言も受ける。
「来週の訪問看護は病院に来てくれますか?」と言っていたという。
電話が鳴る、入院している知的障がいで統合失調症の方の父親から。
外泊で帰ってきている息子が奇声を上げて暴れていて助けてほしいと。
前回の外泊のときも暴れて警察沙汰になったから警察は呼びたくないと言う。
状況を聞くと警察を呼ぶほどではないので家に伺ってなだめ、落ち着いた彼は退院したらまた訪問看護に来て髭を剃るのを手伝ってほしいと笑う。
電話が鳴る、DVがあって統合失調症の息子との同居から避難している母親から。
数日前の夜中に息子が措置入院になったのだが、住んでいるアパートに戻ってきたら部屋がめちゃくちゃだからどうしていいか分からないと言う。
伺ってみると、壁に穴が開き、家具は壊されて、ゴミだらけの中に母親が呆然としている。
大雑把であるが掃除をして、母親を彼女の親戚の家に送り出す。
息子がいなくてもたまには顔を出してほしいと母親は言う。
そんなこんなの一日の終わりにアルコール依存症の方の訪問看護に伺うと、ひとりで寂しくて来るのを待っていたと。
病気や障がいがあれ、そうでないのであれ、「死への選択」や「暴れてしまうほどの衝動」を後押しし、スイッチを入れさせるものは常に「辛さ」である。
そして、本人の辛さはもちろんのこと、周囲の人間も辛さをおぼえる。
そんな辛いときには「誰かがいてくれる」という一点だけでも…、そう、会うこと、言葉を交わすことは一筋の糸になりえるのだと思う。

2020年02月28日