友愛会の支援者への手紙 38
居ること
ある依存症のAさんがふっと漏らす。
「体の中でもっとも『脂肪』がつきやすいのは心なんだと思う」と。
ストレスを溜めないようにと思っていたという。
でも、ストレスがあるのに、さも無いように思い込んでいただけだったと。
冷静で人格者であろうとしていた。
でも、どこかでイライラし、作り笑いをしているだけだったと。
そういった日々が少しずつ「脂肪」として心の周りについていった。
その厚みは鈍感をつくり、ストレスもイライラも感じない反面、人の気持ちも考えられなくなっていった。
そうして拭えない「後悔」を生んだのだと。
人は一人きりでは「自分」の存在を確認できないのだと思う。
「自分」の存在が分かるには、「他人」の存在があってはじめて分かる。
自分と他人の境があって、自分と他人との違いがあって、自分の「心」が分かり、他人の「心」も感じるのであろう。
いにしえの賢人よ、『人間』とはよくぞ作った言葉である。
「人(心)」は肉体に宿るのではなく「人と人の間」に宿るのであろう。
『脂肪』を溜めないためにはどうしたらよいのか…。
それは一人で抱え込まないこと、つまり「人と人の間」にあること。
だからこそ、何より「居る」ことが大切だと思うのである。
誰かが居るだけで「人と人の間」が生まれ、私たちは存在できるのであろう。