冬、ヤマの祈り


冬の深夜
都会の山谷(ヤマ)で
路上に布団を敷いて縮こまる
寒く凍てついた空気を
吐息が白く揺らめかせる
温かい缶コーヒーを渡すとき
その手の冷たさが痛々しい
澄んだ空気が月を輝かす
彼は詩人か文人か
輝くならば暖も与えよと
月に一言もの申す
冬の明け方
都会の山谷(ヤマ)で
煙草が欲しいと手延べで歩み来る
寒く凍てついた空気を
トラックの風が騒がせる
煙草とボッケのカイロを渡すとき
ライターを囲む手が震えている
熱のない太陽が差し込む
彼は歌人か俳人か
陽より火が恋しいと
太陽に一言もの申す
神よ
あなたが創りし星々の
その熱を願わぬだけの温もりを
路上の人々に届かせ給え

2018年02月07日